ベトナム、ホーチミンのホテル。時刻は深夜2時。 窓の外からは、止むことのないバイクのクラクションと、隣の部屋から漏れ聞こえる正体不明の重低音。
頼みの綱であるAirPods Pro 3のバッテリーは残りわずか。「充電切れ=安眠終了」というプレッシャーが頭をよぎる。 そんな絶体絶命の夜、私の睡眠を救ったのは、最新のデジタルガジェットではなく、カバンの底に入っていた「数千円のアナログ耳栓」でした。
今回は、元ITエンジニアの視点から、ドイツのレッド・ドット賞を受賞した耳栓「DJcong」をレビューします。なぜ、最高峰のノイキャンイヤホンを持っているのに、あえてこの「耳栓」が必要なのか?その結論を記します。
そもそも「DJcong」とは?
まずは今回紹介するアイテムの概要から。 ドイツのデザイン賞「レッド・ドット・デザイン賞」を受賞した、睡眠・遮音用の耳栓です。
元エンジニアが噛みつく:「そのノイキャン、表記はおかしい」
この商品を褒める前に、元技術屋としてどうしても見過ごせない点から斬り込みます。 商品名にある「ノイズキャンセリング」という表記についてです。
ご存知の通り、本来のノイズキャンセリング(ANC)は、マイクで拾った騒音に対し「逆位相の音波」をぶつけて打ち消す「能動的(アクティブ)」な技術です。 しかし、このDJcongにはバッテリーも電子回路もありません。
つまり、これは「ノイズキャンセリング」ではなく、物理的に音を遮断する「遮音(パッシブ)」です。 「なんだ、偽物か」と思いましたか? いいえ、ここからが本題です。実はこの「パッシブな遮音」こそが、特定シーンではハイテクなANCを凌駕することがあるのです。
どの音が消えるのか?(周波数特性の体感)
実際に装着して検証しました。
- AirPods (ANC): 飛行機のエンジン音など「低い周波数の持続音」を消すのは最強。
- DJcong (物理遮音): 人の話し声、ドアの開閉音、金属音など「突発的な高い周波数の音」に対して、自然な減衰効果を発揮する。
機械的な処理を介さないため、デジタル特有の「サーッ」というホワイトノイズがなく、聴覚過敏気味な時でも脳が疲れません。
なぜAirPods Pro 3ではなく、これを旅に持っていくのか?
私がAirPods Pro 3という最強の相棒を持ちながら、この耳栓を「絶対に」手放さない理由は3つあります。
1. 「数万円をドブに捨てる」リスクの回避
機内でネックピローを使い、ウトウトしている時を想像してください。 ふとした寝返りで、耳からAirPodsがポロリ。座席の隙間や、暗い機内の床へ……。
AirPods Pro 3は高価です。機内で紛失した時の精神的ダメージは計り知れません。 対して、この耳栓は数千円。最悪、無くしても「また買えばいい」で済みます。この「心の余裕」こそが、本当の意味での安眠をもたらします。
2. バッテリーという「鎖」からの解放
冒頭のベトナムのホテルのように、長時間のフライトや予測不能な騒音環境下では、バッテリー残量が命取りになります。 「充電しなきゃ」という思考自体がストレスになるのです。アナログな耳栓には、無限の駆動時間があります。
3. 「寝返り」への特化性能
商品名に「寝返り痛くない」とある通り、ハウジングが飛び出しているイヤホンとは異なり、耳の穴にフィットする形状です。 横向きに寝ても耳が圧迫されず、朝起きた時の耳の痛みがありません。これは音楽を聴くためのイヤホンには真似できない芸当です。
結論:これは「保険」ではない。「最後の砦」だ
AirPods Pro 3は素晴らしいデバイスです。しかし、こと「睡眠」と「過酷な移動環境」においては、バッテリー不要で、ラフに扱えて、突発的な高音をカットしてくれるDJcongのようなアナログ耳栓に分があります。
- バッテリーを気にせず朝まで爆睡したい
- 海外ホテルの壁の薄さに絶望したことがある
- 機内で高級イヤホンを落とす悪夢を見たくない
もしあなたが一つでも当てはまるなら、ガジェットポーチの片隅にこれを忍ばせておいてください。 ベトナムの騒音まみれの夜、最後に私を救ってくれたのは、この小さなシリコンの塊でした。
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