ベトナム、特にハノイやホーチミンといった大都市圏を訪れる際、現地の熱気や活気に圧倒されると同時に、ある「空気」の違いに気づくはずです。それは、視界が少し霞むほどの排気ガスです。
世界的にパンデミックの影響が薄れ、マスクを外す生活が当たり前になった2026年においても、ベトナムの都市部では依然として多くの人々がマスクを着用しています。これはウイルス対策というよりも、日々の生活を守るための防衛策と言えます。
今回は、実際に現地を歩き、バイク社会の中で感じたベトナムの排気ガス事情と、私たちがとるべき対策について共有します。
コロナが明けてもマスクが外せない理由
ベトナムの街中で、バイクに乗る人々の大半がマスクをしている光景は、今も昔も変わりません。
特に首都ハノイと経済都市ホーチミンにおける大気汚染は、長年の課題です。高層ビルが増え、近代化が進む一方で、道路を埋め尽くすバイクの数は減るどころか増加傾向にあります。
現地の人に話を聞くと、「ウイルスは怖くないけれど、喉が痛くなるのが辛い」という声をよく耳にします。実際に、マスクなしで半日ほど外を出歩いたり、バイクタクシーで移動したりすると、夜には喉にイガイガとした痛みを感じることが少なくありません。
現地の生活者にとって、マスクは「感染予防」のツールから、砂埃やPM2.5を含む「排気ガスフィルタ」としての役割へ完全にシフトしています。
なぜこれほど排気ガスを浴びてしまうのか
この問題の根源は、単に交通量が多いことだけではなく、ベトナム特有の移動スタイルにあります。
前後左右を囲まれる「密」な交通状況
移動手段としてGrabBike(バイクタクシー)などを利用するとわかりますが、信号待ちの際、自分のバイクは数十台、時には百台以上の他のバイクや車に完全に包囲されます。 物理的に「マフラーの排気口」との距離が極めて近く、ダイレクトに排気ガスを吸い込んでしまう環境です。車移動であればフィルター越しですが、バイク移動では生身でこの空気に触れることになります。
常に工事中の道路
都市開発が続くベトナムでは、至る所で道路工事やビルの建設が行われています。これにより、排気ガスに加えて大量の砂埃が舞い上がっています。これが排気ガスと混ざり合い、呼吸器系への負担を増大させているのです。
「解決策」:政府のEVシフト
もちろん、ベトナム政府もこの状況を静観しているわけではありません。社会問題として捉え、解決に向けた「システムのアップデート」を図っています。
特に2020年代中盤から顕著なのが、電気バイク(EV)への移行推進です。 VinFast(ビンファスト)をはじめとする国産メーカーや、海外のEVスタートアップが市場に参入し、街中で静かで煙を出さない電動バイクを見かける頻度は確実に増えました。
しかし、既存のガソリン車(特に年季の入った排気ガスの濃いバイク)の絶対数が多すぎるため、空気が劇的にクリーンになるまでには、まだ長い移行期間(リプレイス期間)が必要でしょう。
【実体験Tips】現地調達すべき「高機能マスク」と選び方
ここで、ベトナム渡航時に役立つ具体的なTipsを一つ共有します。
日本から一般的な不織布マスクを持っていくのも良いですが、現地の排気ガス濃度が高い日には、それでは防御力が足りないことがあります。
おすすめは、現地のコンビニや薬局で「PM2.5対応マスク(3Dマスク)」を調達することです。
- 入手場所: Circle K、WinMart+、Pharmacity(薬局)など、どこでも手に入ります。
- 選び方: パッケージに「PM2.5」「N95」「4 Layers(4層構造)」といった表記があるものを選んでください。
- 形状: 日本の一般的なプリーツ型よりも、口元に空間ができる「くちばし型(3D型)」が主流で、密着度が高く隙間からガスが入るのを防げます。
現地のコンビニでは、1枚単位や数枚入りの小分けパックで売られていることが多く、数十円程度で購入可能です。 「普段マスクはしない派」の方も、バイクタクシーに乗る際や、交通量の多い通りを歩く際のために、カバンに1〜2枚忍ばせておくことを強く推奨します。これだけで、翌朝の喉のコンディションが大きく変わります。
まとめ
ベトナムは急速に発展し、インフラも整備されつつありますが、大気汚染の問題はまだ過渡期にあります。
「せっかくの旅行だから開放的に過ごしたい」という気持ちも分かりますが、健康管理も旅のパフォーマンスを維持する重要な要素です。 郷に入っては郷に従えの精神で、現地の人々と同じように適切なマスク着用を心がけ、快適なベトナム滞在を楽しんでください。
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