ミシュランと聞くと、身構えるほど高級な店を想像する人が多いのではないでしょうか。私自身、長くホーチミンで暮らしていますが、ミシュランガイドに載っている店というだけで少し身構えていました。ところが今回訪れたコムタム(割れ米ご飯)の名店「コムタム・バー・ギエン」は、看板メニューを頼んでも1,000円に届かない、正真正銘のローカル食堂でした。
路地の奥に忽然と現れるミシュラン店
フーニュン区のダンヴァンニュー通りにあるこの店には、装飾らしい装飾がありません。入り口には配達員向けの注意書き「商品は持ち帰る前に必ず確認してください。店を出た後のクレームは受け付けません」と、犬猫の絵に大きくバツ印をつけた「ペット同伴不可」の貼り紙が並んでいるだけです。良い意味で肩透かしを食らいます。

ただし店の奥にひっそりと掲げられた赤いプレートを見ると、この店の実力が分かります。ミシュランガイド ホーチミンシティ版で2023年、2024年、2025年と3年連続でビブグルマン(コストパフォーマンスに優れた店)に選出されているのです。ベトナムのコムタム専門店でこの記録を持つのはこの店だけとのことで、外観との落差がかえって信頼できる情報に見えました。
サイゴン一とも言われる骨付き肉を焼く巨大な炭火オーブン
店の脇に鎮座しているのが、業務用と呼ぶには大きすぎる炭火焼きボックスです。人の背丈ほどある鉄の箱から立ち上る煙と炭の匂いが、通り沿いまで漂ってきます。

調べてみると、この店は肉を毎日仕入れ、注文が入った分だけその場で焼き始めるスタイルだそうです。あらかじめ焼き置きしておかないので、行列の先頭から順に焼き上がりを待つことになります。エンジニア視点で言えば、リクエストが来てから処理を始める「オンデマンド方式」に近く、待ち時間と引き換えに焼きたての品質を担保している仕組みです。
システムに例えるなら、この炭火オーブンは店全体のスループットを支える専用サーバーのようなものです。フロアの回転が速く、次々と客が入れ替わっていくのに、焼き上がりの香ばしさが落ちない。裏側でこれだけの火力を常時稼働させているのを見ると、行列ができる理由に納得がいきます。
一番高い150Kドンの一皿を頼んでみた
メニューは一番安い「スオン(豚肉のみ)」が78,000ドンから、具材を全部盛り込んだ「タップカム(全部乗せ)」が150,000ドンまで6種類用意されています。今回は一番高いタップカムを注文しました。150,000ドンは2026年8月時点のレート換算で1ドン=約0.005円とすると、およそ750円です。ローカルの食堂としては強気な価格ですが、東京でランチを食べることを考えれば十分に安いと感じました。

運ばれてきた皿には、炭火で焼かれた骨付き豚肉(コッレット)が何枚も重なり、その上に目玉焼き、さらに卵と豚肉を蒸し固めたパテ状の「チャー・チュン」と、細切りにされた豚皮(ビー)が盛り付けられていました。付け合わせの千切り野菜と、赤唐辛子が浮いた甘辛いヌックマムが添えられ、割れ米のご飯がその土台になっています。
肉は炭火の香ばしさがしっかりと乗っていて、脂身の部分までパサつかず柔らかいのが印象的でした。ヌックマムをかけてご飯と一緒にかき込むと、酸味・甘み・辛みのバランスが良く、量が多いのに最後まで飽きずに食べきれました。一番高いメニューを選んだ甲斐があったと思える満足度です。
【Tips】コムタム・バー・ギエンに行くときに知っておきたいこと
実際に行って気づいたこと
- 場所はホーチミン・フーニュン区のダンヴァンニュー通り。支店は出していない店なので、似た名前の店と間違えないよう注意
- メニューは6種類の組み合わせがあり、価格帯は78,000ドンから150,000ドンまで幅がある
- 座席は店の両側に分かれていて100人ほど入れる規模だが、昼のピークタイム(11時〜13時頃)は満席になりやすい
- ミシュランのビブグルマン選出後は客足が増えているとのことで、配達アプリ経由の注文も多く、店員は常に忙しく動き回っている
- ペット同伴は不可。配達員向けの注意書きもあるほど、地元の需要が高い店
まとめ
看板を見るまで「本当にミシュランの店なのか」と半信半疑でしたが、実際に食べてみて納得しました。値段の高さと満足度が比例していて、値段が一番高いメニューを選んだことを後悔していません。ホーチミンでローカルなコムタムを探している人は、フーニュン区まで足を延ばす価値があると思います。

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