以前、「【実録】2026年ホーチミン両替の「闇」と最適解。ハータムの行列は「右側」が正解?エンジニア流・現金調達フロー」という記事で、ベンタイン市場前の「ハータム・ジュエリー」を軸にした資金調達フローを紹介しました。
しかし2026年になって現地の状況を確認したところ、前提そのものが崩れていました。今回はその続報です。
ベンタイン前の「聖地」が、本当にシャッターを下ろしていた
2 Nguyễn An Ninh通り、ベンタイン市場の西側角。21年間そこにあった「ハータム・ジュエリー(DNTN Kinh Doanh Vàng Hà Tâm)」の店舗が閉まっているのを、複数の現地Vlogger映像で確認しました。
ただし正直に書いておくと、「いつ閉まったか」は情報源によって食い違っています。「一時休業」とする投稿もあれば「数日前から閉まっている」とする投稿もあり、VnExpressやTuổi Trẻといった大手メディアの報道もまだありません。会社登記自体は「営業中(Đang hoạt động)」のままで、廃業や営業停止の記録はない状態です。つまり「永久閉店」と断定できる材料は今のところ無く、店舗のシャッターが下りている事実だけが確認できる、というのが正確なところです。
前回の記事で「かつてのハータム一強時代は終わった」と書きましたが、その「終わり」がここまで具体的な形で来るとは思っていませんでした。
背景にある新法「Decree 340/2025/NĐ-CP」
偶然にしてはタイミングが良すぎるので、法規制の動きを確認しました。
2025年12月25日、ベトナム政府は金融・銀行分野の行政処分に関する新政令「Decree 340/2025/NĐ-CP」を公布し、2026年2月9日に施行しています。この政令が、無許可の宝石店での外貨両替を明確な違反行為として定義し直しました。
罰金は金額に応じた段階制です。
| 両替額 | 罰則 |
|---|---|
| 1,000ドル未満 | 警告のみ |
| 1,000〜10,000ドル未満 | 1,000万〜2,000万VND |
| 10,000〜100,000ドル未満 | 2,000万〜3,000万VND |
| 100,000ドル以上 | 8,000万〜1億VND |
これは個人に対する罰則で、店舗などの組織に対しては金額が倍になります。ちょっとした小遣い程度の両替なら警告で済みますが、1,000ドルを超えた瞬間に罰金は数十万円規模に跳ね上がります。
「摘発は建前」ではなかった
政令の施行後、ホーチミン市場管理局(Chi cục Quản lý thị trường TPHCM)は実際に動いています。2026年3月〜4月の間に、宝石店が密集するエリアだけでも複数のチームが摘発に入り、合計で1,000万円規模の罰金と、押収された宝飾品も報告されています。4月27日には市場管理局の副局長が「金取引に対するパトロール・監視を強化する」と公式に発言しており、この直後にハータムのシャッターが下りた形になります。
因果関係を断定する証拠はありませんが、タイミングが重なっていることは事実です。前回の記事で警告した「摘発リスク」は、もはや仮説ではなく進行中の現実です。
資金調達フローのアップデート
前回紹介した比較マトリクスのうち、「大金が必要な時はハータムへ」という選択肢は、現状かなり分の悪い賭けになりました。私自身のフローも見直しています。
- 基本は変わらずWISEカードでATM出金。手数料無料枠内で完結するなら、これが最も安全でタイパも良い。
- 枠を超える分はエポスカードでキャッシングし、帰国後すぐアプリで返済。
- どうしても現金が必要な場合は、空港の正規両替カウンターや銀行の外貨両替窓口など、SBV(ベトナム国家銀行)のライセンスが明確な窓口を使う。レートはハータムに劣りますが、法的リスクを取る理由がもう無くなりました。
無許可の宝石店を名指しで「ここが代わりです」と紹介するのは今回は避けます。同じように摘発対象になる可能性がある以上、数日で情報が古くなるリストを載せる方が無責任だと判断しました。
まとめ:グレーゾーンが消えた
レート差自体は今も変わっていません。銀行はハータムより不利なレートを提示しますし、その構造は今後も続くでしょう。変わったのは「グレーゾーンで得を取るか、法令順守で安全を取るか」という選択肢そのものが、片方消えたという点です。
前回「情弱にならないための資金調達アルゴリズム」を提案しましたが、そのアルゴリズムの分岐条件がひとつ壊れた、というのが今回の結論です。渡航前に現金調達を計画している方は、「ハータムがあるから大丈夫」という前提を一度リセットしてください。

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